多くの自治体では、住民基本台帳、医療費データ、介護保険データなどがそれぞれ別の部門で管理されています。そのため、個別の業務には利用されていても、横断的な分析が行われていないことが少なくありません。このような課題に対し、データを統合し横断的に活用する取り組みが進められています。
ニューヨーク市:行政データ統合によるリスクベース検査
ニューヨーク市では、建物検査、税務記録、消防データなどの行政データが、かつては各部門で個別に管理(サイロ化)されていました。この状況を打破するため、ニューヨーク市長データ分析局(MODA)が主導し、複数の行政データベースを統合・結合する取り組みが進められました。
この取り組みの特徴は、単なる事後対応にとどまらず、予測型分析を活用した点にあります。統合されたデータを分析することで、火災や違法改修のリスクが高い建物を事前に特定し、リスクに基づいた検査対象の優先順位付けが行われました。
その結果、従来と比較してより効果的に危険性の高い建物を選定できるようになり、建物検査の効率化や市民の安全性向上に寄与したことが報告されています。このプロジェクトは、行政データの統合と分析の活用によって公共サービスの高度化を図った先駆的な事例として知られています。(注1)
福岡市:人口データを活用した行政需要の把握
福岡市では、勘や経験に頼らない「エビデンスに基づく政策立案(EBPM)」を推進するため、住民基本台帳や人口動態データなどの行政内部データの活用を進めています。具体的には、年齢別人口や世帯構成の変化を分析することで、地域ごとに異なる保育需要や高齢者福祉のニーズの把握・予測に取り組んでいます。これにより、限られた行政資源の適切な配分や、施設整備・福祉サービス配置の最適化を図ることが目指されています。(注2)
(注1)出典:Goldsmith, S., & Crawford, S. (2014). The Responsive City: Engaging Communities Through Data-Smart Governance. San Francisco: Jossey-Bass.
(注2)出典:福岡市(2018)『福岡市データ活用推進計画』
